そんな世界は嘘だから
息苦しさに目を覚ます。畳のうえに倒れていた体を起こすと、後ろ手に縛られた手首に、荒い麻縄が擦れて痛みが生じた。
身体中が異常な怠さを訴えている。いつの間にか、夕刻となってしまったようだ。陽の光が橙色に染まっていた。一体どういう状況なのだろうか。周囲を見渡すも、そこには英傑たちの姿はなかった。本当に何が起きているのか。

その問いへの答えは、襖の向こうから返ってくるのであった。

「ははは…ようやくお目覚めか、独神よ。遅い起床だな」

驚くべきことに、そこにいたのはベリアルであった。身もすくむような重々しいオーラをその身にまとい、此方を見下ろしてくる。笑みを深くすると、奴はゆっくりとした足取りで此方へと近づいた。

「何故、ここにいるか…疑問のようだな。そんなことはどうでもよかろう、貴様の前に我がいる。その事実こそが重要だ」

早く誰かを呼ばなければ。実質戦闘力0の自分に、戦う力はない。焦る気持ちを落ち着かせ、逃げる体勢を取る。だが、そんなことはお見通しと言わんばかりに、此方が背を向けた瞬間を見計らって、ベリアルは自分の襟を掴んで壁へと投げ飛ばした。

その衝撃は強く、瞬間的に全身に痛みが走る。

「逃げても無駄だぞ。お前の頼みの綱の英傑たちは此処にはいない…観念することだな。………ふっ、何故か、など貴様が分かっているだろう。それとも忘れたか?あの戦いのことを。貴様らが我に敗退を喫したあの瞬間のことを」

その言葉で、全てを思い出す。涙がじわりと滲んだ瞬間、ベリアルが顎を掴み、そして顔を近づけた。そうだ、負けたのだ。あの最終決戦のとき、英傑たちはベリアルの力の前に屈したのだ。そして自分は悪霊たちに捕らえられ…此処に幽閉された。
ベリアルは此方の唇を一つ舐めると、固く結ぶそこを、舌で割るようにして無理やり口内へと侵入させる。歯列をなぞり、舌を舐めあげ、堪能するかのように中を犯しつくすと、流し込むようにして唾液を注ぎこんだ。飲み込むのを拒否し、汚らしく畳の上に唾液が垂れてしまったその様をみて、ベリアルは再び深い笑みを浮かべた。

「…今だ反逆の精神は失わず、か。気高きものだ。だが貴様一人では何もできまい。英傑たちが助けにくることなど、ありはしないからな。もう二度とあのような気は起こさぬよう、これから我が貴様を調教してやる」

邪魔なものは全てはぎ取ろうと、白い手が着物の袷に手をかけた。身体をよじって拒絶すれば、面倒だと言わんばかりに身体を強く壁に押し付けて、そして頭を壁に押さえつけた。頬が壁に押し付けられて痛い。
背中越しにベリアルの低い体温を感じた。抱き締めるようにして、下着越しに指を下の割れ目に沿わせる。ぞわりとした感覚が走った。

「前戯などはしてやらぬ。我が求めているのは痛みの伴う調教だ。…勿論それも何れは快感へと変わるのだろうが。だが、貴様の苦しむ顔がみたい。そうだな、貴様の大事にしていた英傑が破れたときのような、悲しみと屈辱に満ちた顔が我はみたいのだ」

湿り気の少ない秘部へ太い指が侵入する。擦れる感覚は痛みを起こした。くぐもった声をだせば、ベリアルの息遣いが荒く、耳朶をかすめていく。その感触が嫌だというのに、押さえつけられた頭は微動だにしない。力の強さでは、圧倒的なまでの差があった。

「涙がポロポロと落ちて…それは何の涙なのだろうなあ」

一度中に入れた指を抜き、下着のみをはぎ取った。頭を押さえつつ、露になった秘部に一度己を擦り付けると、合図なく奥へと穿った。今まで感じたことのない質量が、慣らされていない内部を一気に犯し始める。かはっ、と乾いた息を吐きだすと、ベリアルは愉快そうに喉を鳴らした。

「くくく…狭いな、進みが悪くて叶わん。そうだ、こうすれば奥深くまでいけるだろう?」

押さえつけていた手を外し、モノ自体は中に入れたまま身体を持ち上げた。そのまま自分の真上に位置を移動させると、ゆっくりと嬲るように身体を下へと降ろしていく。垂直に奥へと突き進む感触に、足で堪えようとするも、逆らうことができない。

「まだ抵抗をするか…だがもう少しだ。もう少しで全てが貴様のなかに…くくく…フハハハハ」

まだ入り切っていないのに、既に歓喜の声をあげるベリアル。まだ終わっていない、と足にすべての力を込めて抵抗する。だがそれも空しく、奴の手によりズブズブと奥へ奥へ…やがて最奥を突いたのであった。
耳たぶを舐めながら、ベリアルは律動を始める。唇を噛みしめ、痛みを堪えればそれもまた奴の喜びへと変わるようであった。荒い息遣いが嬲られている右耳から伝わる。

「苦しいか、暫し待て。それも、次第に…快感へと変わる。湿り気を帯びてきているのが、っその証拠だ。抗うことはない、我のモノで果てろ……我のモノと、なれ!!!」

ぐりぐりと奥に押し付けられると、声が高くなってしまう。我慢するように、口を閉じても息が漏れるのが自分でも分かってしまう。動きを早くして、遅くして、反応が良い場所を執拗に擦り付けて。我慢が効かないように調節してくる。声が零れて、部屋中に響いた。

「喘ぎが我慢、できなくなってきた…みたいだな。構わん、構わんぞ!我もお前の中で果ててやる…これから永遠刻み付けられる感触だ、しっかりと…覚えるのだ、ぞ!!!」

世界が白く染まった。ぐりぐりと奥に精を吐きだされ、意識を一度失いかける。絶え絶えの息で堪えて、まだだと。こんなところで落ちては、仲間たちに顔向けできないと唇を噛みしめた。

「…嫌だ、負けてなんかて…ない…まだ、ぁ…私は……」
「はっ、はあ…そのようなことをまだぬかすか。ハハ、それでなくては、宿敵とは呼べぬな。良いだろう」

ベリアルが口付けをしてくる。だが、今の自分に最初程の抵抗力はなく、すんなりと侵入してきた舌に口内を犯され、犯され尽くされて。全身がドロドロになるまでその行為は続いたのであった。




「という夢をみた」
「……………主殿はそれを俺に告げて、どうしたいというのだ」
「あまりいい気分ではなかった。このままじゃ眠れない、甘やかしてモモチさん」
「明確に言葉にせねば、俺は何もしないぞ」
「………モモチさんと幸せになりたいです」
「……………物足りない、が、だが怖い夢を見た後だから仕方がないか。…主殿、俺が優しく、甘やかしてやろう。既にいないもののことなど気にも留めず、忘れてしまうくらいに、な」

後ろからそっと抱き締められた。先ほどの夢で感じたような不快な感覚はそこにはない。強張っていた身体がそっと解れていく。唇をそっと合わせて、優しくて逞しい腕に身を委ねるのであった。