いらずらっこは誰だ
ほかほかと真っ白いお米から湯気が立つ。くんくんとそれを短刀たちが幸せそうに嗅いでいる光景は、なんとも和やかで平和なワンシーンだ。その様に兄である一期も同じような感慨を抱いたのだろうか、目頭を押さえて突然鼻を赤くした。

「もしや一期さん、感極まったのですか…?!何故に!!」
「いえ…どうやら、ご飯にわさびが仕込まれていたらしく…くっ、涙が止まらない!…鶴丸殿!!」

その一声が放たれると同時に鶴丸が盛大に笑い転げる。犯人など、だれが言わずとも知れたことである。最近の鶴丸はいたずらっ子のレベルばかり上がっていく。

「くっ…ははは!やったな、成功だッ驚いたか?」
「何を喜んでおられるのですっ!…クッ…沁みる…」
「堅物のお前のことだ、泣き顔なんて滅多に見られるものでもないだろう?それにだな、…涙って、心を軽くするんだぜ」
「何いい雰囲気醸し出して胡麻化そうとしているのですかッッ!そうはいきませんぞ、鶴丸殿!今日こそお覚悟を!!」

鶴丸がいたずらっ子になっていくにつれ、ほかの刀剣男子たちの大人げなさも進化していっているような気がする。もしやこれは唯識ことなのかもしれない。このままではマジでうちの本丸は幼稚園状態になるかもしれないぞ。

「…なんとかしてくれませんかね、岩融さん」
「だっはは!俺にどうしろというのだ、主。俺が面倒をみてやれるのは、まだまだ戦闘に未熟なものだけだぞ」
「…はあ」

一期が鶴丸と仲良く追いかけっこをしている、仲良きことは美しきかな。だけどこの場においてふさわしい言葉ではない。短刀たちがぽかんと、まるで小学生同士がやるようなふたりのじゃれ合いを、呆気にとられながらみつめているではないか。お兄ちゃんの威厳が地に落ちまくりですぞ、一期殿。

「こーらー、そろそろやめなさーい。二人ともー…ちょっとそのご飯は一期さんのでしょ、なんでこっちに持ってくるの」
「主もわさびご飯、食べてみろよ!涙が出るほどにうまいぜ」
「つっ鶴丸殿、貴方という人は主を巻き込もうなどと…!いい加減になさい!!」
「…はあ」

薬研が呆れたようにため息をつき、弟たちにさっさと飯を食えと号令をかける。ハッとすると同時に、粟田口メンバーは朝餉を再開した。その傍で、二人のじゃれ合いは続いている。誰が止めることない彼らの喧嘩は、全員の朝餉が終わるまで続くのであった。