久々の故郷へ
何か月ぶりかの極東支部だというのに、ここは相変わらずの天気の悪さだ。曇り空からは今にも雨が泣き出しそうな雰囲気を醸し出している。

さん…此方にはどれくらい滞在する予定ですか」

操縦士が此方に声を掛けてきた。少しノイズの混ざった声音が、アラガミの声に混ざって耳に届く。何処かで奴らが騒がしている。肌がピリピリとしたいつもの感覚を訴えてきていた。

「んー…そうね、あまり長居する予定はないけれど。暫くはいるつもり、かな。アリサたちとも久々に会うし…レンもかなーり成長しただろうしね。ダメと言われてもゆっくりするわ」
「そうでしたか…あっ、そういえば聞きましたか?ブラッド隊の話。今注目度ナンバーワンの部隊のことです。黒蝶病や螺旋の樹…様々な問題の解決に率先して取り組んだそうです。詳細は知りませんが…ユノと一緒に戦ったって有名ですよ」
「…ええ、知ってるわ。世界は狭いものね、遠い場所の話だと思っても、すぐに噂なんて飛んでくる」

アラガミの叫び声が先ほどよりも近い。操縦士の話に気はそらさず、外の様子を目だけでうかがう。その瞬間、ジジ…というノイズ音と同時に緊急通信が入った。操縦士が慌ただしくそれに応え始める。

さん、救援要請です!!サテライト拠点に大型アラガミ、小型アラガミの接近を確認!ただちに急行せよとのこと!!目標は降りてすぐです!!!」
「了解」

愛用の神機を握りしめ、ドアを解放する。ヘリが起こし続ける暴風を全身で受け止めながら、覗いた先に噂の螺旋の樹が彼方に見えたことだけを確認して、私は飛び降りた。
視界の端にサテライトをいれつつ、眼下に広がるアラガミたちの群れ、そのなかにいる一体にターゲットを絞った。落ち際に神機を振り切れば、敵は血しぶきをあげて倒れこんだ。砂埃をあげながら地に降り立てば、招かれざる客に対しアラガミたちは一斉に殺気を向ける。

「…死ね」

向けられた殺気を斬るように、神機を一閃した。サテライトには絶対に、私が近づけさせはしない。構えなおした神機は、思いに呼応するかのように熱を持ち始めた。

さあ、戦いの始まりだ。


*人物紹介


元第一部隊隊長。クレイドル所属。任務をある程度達成したため、一時的な帰郷をする。を姉に持つ。基本的に口が悪い、が別に口が悪いだけで態度が悪いとかではない。むしろしっかりとした性格をしている。頭の赤いリボンが目印。

お洋服とお買い物代好きブラッド隊長。最近どう見てもギルとの仲が絶好調。マイペースさが放っておけないとのこと。