「でねでね、隊長がねーどかーんって!!一撃でグボログボロを倒しちゃったの!!」
「へえ、そうなのね」
プロペラが回る音と一緒に楽しそうな声が耳に直接届く。無線越しだというのに、その音量は殺されていない。
「ナナ、あまり騒がしくするんじゃない。すまないな、」
ジュリウスはナナの隣で腕を組んで座っている。ぷうとほほを膨らませるナナの姿は、アリサがするそれにも似ていた。懐かしい面々の顔が浮かんでくる。早く会いたい。
「ふふ…いいのよ。ねえ、もっとブラッドの活動を聞かせて欲しいわ。聖域には何があるの?」
「そうそう、そこにはね、食べ物いっぱいあるんだ!おでんパンの材料も作ってます!!」
「…おでんパン??」
「おでんパンはねえ……今は食べれないから、帰ったらにもあげるね!お近づきの印!!」
「楽しみね」
私がいなかった間に、知らないことが沢山増えていそうだ。それもそうだ、一年以上は外国へ出張にでていたことになるのだから。
窓の外を見れば、螺旋の樹が見える。この極東支部でみたことのない景色、第一位の光景。先ほどは一瞬だったが、遠巻きからよく見てもその姿は圧巻だった。
「…凄いわね、螺旋の樹。ほんとう、知らないことばかり増えて…なんだか少し寂しい気もする。でも、貴方たちがいなかったらそれもなかったのよね。ありがとう、守ってくれて」
「えへへー、皆でがんばりました!ね、ジュリウス」
「ああ、そうだな」
ふたりは微笑みあう。その姿は、まるでかつての私たちをみるようだ、そう思った。第一部隊の全員で戦い続けた、あの日々。彼らもまた同じように、仲間たちと共に苦境を切り抜けてきたのだろう。ふたりの表情がすべてを物語っていた。
「…いいわね、仲間って」
「どうかしたか?」
「いいえ、なんでもないわ。そんなことよりもほら。極東支部が見えてきたわ」
仲間たちに会える喜びが胸にしみわたる。急ぐ心を抑えきれず窓に張り付くようにして外を見つめた。
ジュリウスがそんな私をみて、微笑ましい視線をよこしていることに気が付くと、ひとつ咳ばらいをして私はこっぱずかしさをごまかすのであった。
重なる光景